アニマル×エデュケーション
Animal と Education がテーマのオージー娘が綴るつれづれ日記。

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転がる石に苔むさず

図1

転がる石に苔むさず という諺をご存知でしょうか。英語ではA rolling stone gathers no mossと訳されたりするのですが、実はこの諺、日本と英語圏(特にアメリカなど)では異なる解釈をされている諺の一例なんです。

日本では、苔は観賞用にわざわざ時間をかけて育てたりするように、何かが「苔むす」ことを「美しい」と捉える傾向にあります。実際日本人の私も、深い森の中で苔に覆われた大木や岩を見ると、その美しさに何か神聖な気持ちになるものです。苔は、環境の変化が少ないところにじっくりと時間をかけて育つので、苔が生えるということは、安定した状態が長く続くことを象徴し、それが国歌「君が代」の中にも歌われています。では「転がる石に苔むさず」ということわざは日本でどういうふうに使われるかというと、「あまりコロコロと仕事や環境などを変えていると何も身につかない」「一つの場所に腰を据えて時間をかけて色んなものを築き上げていくことが大切」という意味で使われるようです。実際、履歴書の職歴欄に転職歴が沢山書かれていると日本では就職に不利になるのが現実。一つの場所に正社員として長くいたという実績の方が高く評価される社会です。

一方アメリカなどの英語圏の国では、苔(moss)は“石についてしまう汚れ”というふうに捉え、上のことわざの中でいうと、苔は“長い間同じ環境にいることで知らず知らずに身についてしまう悪い癖や、偏った考え方”などを例えるそうです。つまりA rolling stone gathers no mossのことわざは、「積極的に自分から動いていれば、余計なものに惑わされず、常に新鮮でいられる」という解釈となります。履歴書の職歴欄にも、様々なジャンルの仕事をしたりコミュニティ活動をしたりという履歴がある方が「幅広い経験とスキルがある」と判断され、就職にも有利になります。


どちらの解釈もそれぞれの文化や考え方の傾向を表していて、真逆な解釈ながらも、両方に納得できるので、私はよく“国が違えば考え方も違う”という話をするときにこの諺を例に出します。

私のこれまでの人生においても、この解釈の違いをとても実感しました。今日はそのことを自分のこれまでを振り返りながらまとめてみます。


大学での行き詰まり
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私は子供のころから動物が好きで、高校で進路を考える時、周りの大人みんなから獣医の道を勧められました。獣医の資格があれば仕事に困らないし、主に動物と関わる仕事だったら口下手な私でもやっていけるんじゃないかという親の親切心や先生方のアドバイスに従い、獣医学部に進みました。

ところがいざ大学に入ってみたものの、どうも勉強が楽しめない。私の興味の対象は、ワンちゃん・ネコちゃんの医療よりも、自然界でたくましく生きる野生動物とか、動物園の動物などでした。そのマイノリティさは予想外のもので、他学科や他大学に仲間を見つけて大学の外で積極的に活動をして過ごしていましたが、学年が上がるごとに動物の医療の要素がどんどん強くなり、そして私の目指すものは医療ではない方向へとどんどん向かっていきました。

大学での疎外感は増す一方で、勉強に対するモチベーションも上がらず、なのに変なプライドがそんな自分を許さず、無理に自分を作って大学での居場所を確保することに心がどんどん疲れていきました。


一度乗った船
実は大学に入って1か月目くらいにすでに「進路を間違えた」と感じてはいたのですが、親にそれとなく話そうと試みるも、聞いてもらえるわけもなく。2年目に入った時に改めて自分の心が獣医師になることに向いていないことを真剣に親に伝えようと、口下手な私は手書きの手紙まで書いて大学を辞めたいことを伝えたのでした。しかし、その返事にもらった母の手紙にはこんなことが書いてありました。

「獣医学科に入りたくても入れない人も沢山いる中で、あなたは努力して入ることができた。一度乗った船には最後まで乗りなさい。辛くても、努力は必ず最後に報われますから。努力家のあなたなら絶対できる!」

実家から離れて暮らしていたし、母には言葉で太刀打ちできないのも分かりきっていたので、それ以上のやり取りはしませんでした。まだまだこれから5年もある獣医学修了までの道のりを、自分の意志に反して進んでいくことには相当な努力が要ると思い、絶望を感じました。それでも、こんな返事をもらってしまったらもう最後まで進むしかないと意を決し、留まったのでした。


鬱病、休学、そして気づき
キャプチャ

ところが、大学の研究室に入った年、ついに鬱病になりました。敷かれたレールに対してモチベーションが上げられない自分、研究室で人とうまくやろうとするだけで心が疲れ果てる不器用な自分が大嫌いになり、睡眠も感情も体調もコントロールできなくなり、大学に行けなくなって、休学届を出しました。

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休学中、カウンセリングを受ける過程で、復学までとにかく自分がやるべきだと思ったことをやったらいいと言われ、心の赴くままに色々なことをしました。

アルバイトをしながら英語の勉強、鳥の勉強、動物園実習etc。海外にも足を運んで野生動物の保全活動に参加したり、動物園スタディーツアーに参加したことがきっかけとなり、自分の目指したいものがはっきりしてきたのでした。それは、

 “自分は人に動物や自然界の魅力を伝えていくことで、人と自然とが共存できる社会づくりに貢献したいんだ”

ということ。つまり、もっと広い範囲の動物の勉強をして、教育の方面から知識を役立てて行きたいということに気付けたのです。具体的に言うと、動物園でアニマルトークをしたり、楽しい解説パネルをデザインするような仕事がしたいと思いました。

そしてもう一つ気づいたこと、それは、

 “自分はどうやら海外にいる時の方が自分の持つ力を発揮しやすいらしい”

ということ。2年前の母の手紙の言葉を胸に頑張っていたけど、「一度乗った船」から落ちないようにするのに病気になるほど心がすり減るのは、自分の努力が足りないからとか不器用だからとかじゃなくて、ただ単に日本の社会が合わないだけなんじゃないかと。だったら日本を出て、堂々と人と違う道に進めばいいんじゃないかと。

今思えば、「転がる石に苔むさず」から“A rolling stone gathers no moss”の考えに切り替えることができた瞬間でした。



渡豪、目標にまっしぐら
これがきっかけで日本の大学を中退し、オーストラリアの大学に入りなおして動物学と教育学を勉強するに至ったのでした。
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オーストラリアに来てからは、無理に居場所を作ろうとグループの中で自分を作るようなこともあまりせず、自分が必要と思ったことを必要と思った相手と一緒にやるようにしていました。授業もいつも一番前に座って録音させてもらい、実習の時も最後まで残って先生に質問。傍から見たら、絡みにくいオーラ出まくった変な人だったと思います。そのことを気にはしていましたが、辞めはしませんでした。変人だと思われる辛さよりも、自分の目指すもののために勉強したい気持ちの方が勝っていたからです。


夢叶う!も、まさかの急展開
動物園の教育課で働く夢を変わらずに持ち、できることをまっしぐらにやり続けた結果、奇跡的に日本人教育オフィサーという新しいポジションを作ってもらう形でケアンズの動物園にフルタイム就職が決まったのでした。
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ところが、その後ケガや相次いだ自然災害、ビザの問題など不測の事態が続き、まさかの急展開であれよあれよという間に職を失い、教職に転職して今に至ります。


教職に転職、天職に!
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2011年の後半、動物園の次のチャンスを目指すまでの間と思って「とりあえず」始めた臨時代行授業の仕事だったのですが、なんだかんだでそれ以来ずっと続けてもう6年にもなります。その6年間の間にも、4年間同じ学校でパートタイムで日本語を教えたり、放課後は家庭教師をしたりとスタイルは様々ですが、職業としては「教師」を一貫しています。でも何を教えているのかと聞かれると答えは「色々」。臨時代行授業の仕事では、その日休んだ先生が担当する科目をレッスンプランにそって教え、家庭教師では各家庭の必要に応じて教えるので、資格のある日本語と生物だけでなく、小学校科目全般、英語、数学、障害のある子どもの特別授業、日本の国語、ピアノ等々、教えられるものは何でも教えるというスタイルでやってきました。

どこかの学校に所属している先生によく言われるのは、「いつかまたどこかに所属できるチャンスは来るわよ」と。臨時代行の仕事はいつ仕事が入るか分からない不安定さや、どんな子供・どんな科目を教えるか当日まで分からないやりづらさ、知らない先生に舐めてかかる生徒の問題行動など、一般的にあまり多くの先生が好んでやるような仕事ではないのかもしれません。



自分は転がる石
図2 396987_10150829991696110_1886075322_n.jpg1380686_10152282369891110_2021975154_n.jpg IMG_1508.jpg   

でも、人生どんなふうに転がるか分からないものです。最初は仕方なく始めた代行教師の仕事を通じて、あんなに何年間も夢見てやっと入れた動物園の職場にまた戻りたいという気持ちがもう出てこないほどまでに、教職が天職だと思えるようになってしまったからです。ご縁で4年間教えた愛着のある学校を去ってみたら、とたんに色んなところから声がかかるようになって、仕事やコミュニティ活動の幅も量も増え、より活き活きと安定した毎日が待っていたからです。

どうやら私は、一つの場所に長く留まって一つのことを突き詰めていくことよりも、色んな所で色んな人と関りながら、多ジャンルのことを同時にやることの方が好きなようです。そのために、興味が出たものには自分から動いていくし、向こうからやってくるものにも拒まずに何でもやってみるスタンスでいます。まさに私は、苔のむさない転がる石、a rolling stone that gathers no mossです。何か一つに長けてはいませんが、色んなことやってきたからこそ、どんな学校で何の科目を教えろと言われようと、いつも新鮮なチャレンジ精神で挑むことができます。色んな経験を組み合わせて今までなかったものを生み出すことや、関りの無かった人同士を繋ぐことだってできます。


自分らしく生きるということ
キャプチャ 

日本を飛び出し、違う考えが浸透した国に飛び込んでいったことで発揮できた「自分らしさ」。そこに至るまで、散々周りの人には心配かけたり不快な思いをさせたと思います。時間もお金もかかりました。何年も本気で目指し続けた動物園教育の夢が叶って3か月もせず破れた、かっこ悪い挫折経験もある。日本にいる時から沢山の動物園実習を重ねたり、苦労して動物学の学位まで取っておいて、一度破れた夢をもう一度叶えようとしないことに対して「根気がない」と思った人もいるかもしれません。4年間勤めた働きやすい学校を自分から辞めてしまって、「もったいない」と思っている人もいるかもしれません。

でも、「転がる石に苔むさず」“A rolling stone gathers no moss”という同じ諺が全く逆の2つの解釈を持つように、世の中には色んな考えをする人がいて、そのどれが正解というわけではありません。大切なのは、“自分が”どう考えどう動くか。人生は選択肢の連続で、数々の分かれ道の度に“自分で”道を選んでいくことで、人とは違う「自分らしい」人生を歩めるのだと思うのです。だけど、やっぱり周りとあまりに違いすぎると、摩擦やすれ違いなど、辛いことがどうしても生じてうまく行かなくなるものです。だったら、自分の存在や考えが受け入れてもらえるような環境に自分から動いていくことだって生き方の一つです。一つの場所に深く根を下ろして何かを極める人も、色んな場所を転々として色々手がける人も、世の中には両方必要なわけで、どっちがいいというわけではない。だけど、大切なのは、自分が生きたい人生を生きること。そうしていれば、自然と社会に求められるようにもなるのだと私は信じています。






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・・・と、そんな話を、先日日本の中学生の前で講演させていただいたのでした。これから進路を考えていく中学生たちにとって、私の波乱万丈な人生が少しでも刺激やヒントになってくれたらいいなぁ。

ランダムに撮らせてもらった生徒たちのワークサンプルを見ると、あながち悪くはない手ごたえだったかも。

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こんなデコボコだらけの私の今までの人生。決してお手本ではなく、海外でこんな毎日を送っている日本人もいるんだというあくまで一人の例としてですが、これから可能性の種をいくらでも開花できるポテンシャルを秘めた中学生の前でお話しする機会をいただけたことで、自分自身が一番刺激をもらったように思います。この機会に感謝するとともに、これからも話したことが嘘にならないように、色んなところと積極的に関わりながら自分らしくありたいと思っています。


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